皮膚癌と手術の方法:基底細胞癌の例
形成外科の宇都宮裕己です。
今回は皮膚の悪性腫瘍、いわゆる皮膚癌のお話です。
皮膚癌自体まれですが、皮膚癌の中では比較的頻度の高いものに基底細胞癌があります。
顔によく発生し、男性にやや多く、72.6歳が平均年齢で10万人あたり3.34人の罹病率だそうです(皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン第3版より)。
当院でも時々いらっしゃいます。
このように小さいホクロにみえるものから
ジュクジュクしたものもあります
基底細胞癌自体は転移(ほかの臓器に癌細胞が移動してそこで増えること)がまれで、予後は良好です。ただ放置しておくと基底細胞癌のなかには深く深く組織を破壊しながら進んでいくものもあるので、とれるうちに手術で取り切るのがよいとされています。
実際の手術ですが、基本的には二期的に手術を行います。二期的に手術をするとは、具体的には一回目の手術で癌をとって、病理検査ですべて取り切れているという結果が出てから二回目の手術で皮膚や皮下組織の欠損を埋める手術を行います。
一回目の手術は皮膚癌の取り残しがないよう肉眼的な病変から少なくとも4mm以上の正常組織をつけて切除し、人工真皮という人工的につくった皮膚のようなもので被覆します。
実際の写真がこちら(傷の写真が出ます、苦手な人は見ないでください)
白いのが人工真皮となります。
その後病理検査で取り切れているという結果がでたので、二回目の手術では左の足の付け根から植皮(皮膚移植)を行いました
実際の写真がこちら(傷の写真が出ます、苦手な人は見ないでください)
その後ですが
皮膚は無事生着しまして、二か月後の写真となります。
まだ赤みや色素沈着はありますが、もっと目立たなくなります。
今後はしばらく再発ないか通院していただくことになります。
なかなかご自身では判断が難しいと思いますが、中高年の方でほくろっぽいのが急に出てきて大きくなってきているとか、ジュクジュクがなかなか治らないみたいな場合は一度診察にきていただければと思います。当院では皮膚科専門医の院長とも連携して、基底細胞癌が疑われたり判断が付きにくい場合は一部組織をとって調べます。